2017.12.20
12月20日 年の瀬に想う

 

祖父の眠る靖国神社。

九段下の駅を出て少し歩くと、そびえ立つ大鳥居と見事な銀杏並木が目に飛び込んできます。

 

 

 

その威容は高さ25メートル、8階建てのビルに相当するそうで圧倒されてしまいます。

まだ元気に歩いていた頃の山口の祖母のたっての願いで家族で訪れ、初めて仰ぎ見たのは私が小学校1年生の時でした。

祖母は36歳の時にお腹に子を宿したまま夫を見送って、27年目の事。

念願の靖国神社で若き夫と再会出来たでしょうか。

 

 

 

 

優しかった祖母はその後74歳で亡くなるまで独身を貫きました。

私も一度でいいから祖父と会って話してみたかったなあと思いながら歩く境内。

神社はどこも空気が澄んでいるように感じるものですが、靖国神社の広大な敷地に漂う厳かな雰囲気は他と一線を画しています。

 

 

 

 

祖父がミンダナオ島で亡くなっていることを知り、「靖国神社で軍歴を辿ることが出来ます。偕行文庫(図書館)で〇〇さんに稲垣から聴いて来ましたと言って下さい。」と教え下さったのは文筆家の稲垣麻由美さん。

彼女の干支の年賀状の筆文字デザインを担当させていただいて7年目になります。

戦争終結から70年の節目の年であった2015年に刊行されたご著書『戦地で生きる支えとなった~115通の恋文~』のため、靖国神社へも足しげく通われたことでしょう。

本の全編に渡り瑞々しい筆致で当時の様子を鮮烈に実感させて下さいました。

この秋には、『人生でほんとうに大切なこと~がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話~』

を上梓された稲垣さん。

 

 

 

 

こちらは、2015年に5年後の生存率5%と宣告された進行性肺がん患者である千賀泰幸さんの、絶望から救い出し希望を持って人生を全うする道へ導いてくれた、がん専門の心療内科の存在を知って欲しいという切実な願いから生まれました。

『戦地で生きる支えとなった…』の本を読み感銘を受けた千賀さんが、何としても稲垣さんに書いて欲しいと命のバトンを渡されたのです。

12月10日には、主人公である精神腫瘍医の清水先生、最終話の主役の千賀さん、そして身を粉にして国立がんセンターに通いつめその願いを叶えられた稲垣さんによる出版記念講演会が開かれました。

 

 

出典:稲垣麻由美オフィシャルブログ

 

 

重いテーマでありながら会場では笑い合う場面も多く終始和やかな雰囲気でしたが、やはり流れてくる涙は止めることが出来ませんでした。

がん患者の抱える不安や混乱は、本人だけでなく家族や友人も同様でしょう。

大切な人が元気でいることは本当に幸せで、その人を大切に出来ることは本当に恵まれていること。

私もこの本を読み、講演を聴いて、より多くの人々にこの本を伝えたいと心から感じました。

ちょうど12月はお世話になった方や大切な人にたくさん会えています。

真心を本のクリスマスプレゼントに託して。

 

 

 

 

さあ来年は戌年ですね。靖国神社にも愛らしい犬を描いた巨大絵馬が飾られていました。

 

 

 

 

一年の終わりに、来る年への明るい希望を感じさせてくれます。

 

 

 

 

そのそばには、兵士たちの忠実な仲間だった軍馬や軍犬、軍鳩の慰霊碑も静かに佇んでいます。

 

 

 

 

軍と共に戦い戦地に消えた多数の動物たち。

 

 

 

 

戌年の筆文字は、この強く凛々しい軍犬のジャーマンシェパードからインスピレーションを得ました。

また今年も稲垣さんの大切なお仕事をさせていただいたこと感謝してやみません。

 

慰霊碑に向かい静かに手を合わせ、ふと振り返ると犬や馬の影がまるで生きているかのように地面に映し出されていました。

 

 

 

 

元気に駆けているように見えて、また視界がにじんだ師走の帰り道。

たくさんの尊い犠牲の上に今の平和があります。

 

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