2020.04.20
4月20日 収束の日を信じて

今月7日に緊急事態宣言が出て明日で2週間。

5月6日の最終日までの折り返し地点とも言えるのでしょうか。

しかし新型コロナウイルスの蔓延はいまだ収束が見えず、GWが明けたら普通の生活に戻れるとはとても思えない状況です。

書道の世界も教室の休止や展覧会の中止、競書誌休刊など支障が広がるばかり。

書は一人で書くものですが、一方で仲間や社会との繋がりとも無縁ではいられません。

熱意を持って自由に書道に取り組める環境のありがたさを改めて感じます。

今月も、生徒さんからの通信添削や課題の提出をたくさん受け取りました。

 

 

 

 

これからもしばらくこの厳しい状況が続きそうで、学校はいつ始まるのか、教室再開はいつになるのか・・・。

そんな中でも「5月号が届くのを楽しみにしております。」との添え書きをしてくださる生徒さんのために、様々な方法を考え手探りしながらも前へ進んでいきたいと思っています。

 

先日は、故郷の同級生が紀州屈指の銘石『那智黒石』の硯を送ってくれました。

 

 

 

 

お父様の遺品だそうです。

手にするとずっしり重く、計ると約2キロもありました。

お父様が現役で和歌山へ赴任されていたときに買い求め、お祖父様へ贈られたものとのこと。

お祖父様はとてもお元気で92歳で亡くなる一週間前まで自転車に乗っておられたとか。

硯の下に敷いてあった半紙をそっと広げてみると、見事な文字が現われました。

 

 

 

 

お祖父様の字だそうで、代筆を頼まれるほどの腕前だったとのこと、生命感のあふれる筆跡に胸が熱くなりました。

貴重なお品を受け継がせていただきありがとうございました。大切にします。

 

今日は一日中冷たい雨。

 

 

 

 

自粛生活の中、外に出ると咲き始めたツツジも雨に打たれていました。

ツツジを見ると故郷のGWを思い出します。

 

 

山口県岩国市 吉香公園

 

降りしきる雨音を聴きながら書道用具の整理をしていたら、父が残した印が出てきました。

 

 

 

 

普段、書道で使う雅号印はただの四角い石材のものですが、観賞用に美しい彫り物が施されたものは中国のお土産物として喜ばれたり、コレクションで収集されている方も多くいらっしゃいます。

几帳面な父らしく、箱の裏側にはいただいた日付などのメモ。

 

 

 

 

自分のフルネームが彫られた印は気に入っていたのでしょう、何度も使用したらしく箱の中は印泥で紅く染まっていました。

 

 

 

 

この印にまつわる話がしたかったなあと思います。

印を味わうには、自ら彫ったり印影や石自体を見たりする以外に『触る』という分野があり、『手択』と呼ばれています。

 

 

 

 

手に取ってコロコロしているとひんやり冷たいながらも心地よいものです。

 

父が旅立って4年。

 

「お父さん、tatu_no_koさんが桜の写真を送ってくれたよ。」

 

 

岩国の名勝『錦帯橋』周辺に咲く桜

 

「今年はコロナがすごくてね、桜まつりが出来んかったんよ。」

 

 

2016年の桜まつりを記していた父のメモ

 

話しかけても返事は聴こえません。

手の中の印を握りしめました。

父はきっと空の向こうからこの苦難の日々を見守ってくれていることでしょう。

必ず戻ってくる収束の日を信じて一日一日を頑張っていきたいと思います。

 

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