2014.04.30
4月30日 世界への架け橋vol.4 

都内の大学で非常勤講師をしている友人主催の、留学生のための着物着付けイベントに参加しました。

 

 

 

 

たくさんの方々の協力により3年前より都内各地で開かれているこのイベント。

この日は渋谷にある私立大学の「アクティビティ・日本の文化理解」の授業の一環として行われました。

 

 

 

茶室のある地下の和室に期待に胸を膨らませて集まってきた留学生。

アメリカ、カナダ、イタリア、ポーランド、スペイン、マレーシア、台湾と国籍も様々です。

 

 

私は記念写真の背景用の書の提供とメイクを担当しています。

 

 

 

 

この日のために様々な業種の方が駆け付けて下さっています。

 

 

 

男子の着付けには、『男きもの普及協会』代表で日本の伝統文化としての着物を男性に広めるための様々なイベントを手掛けていらっしゃる熊切雄三さんが初参加。

 

 

 

 

代表の友人が学生一人一人のサイズを確認し、身体に合う着物、それに合う小物や草履などを全て準備してくれて、次々に袴姿や華やかな着物美人に生まれ変わっていきます。

身長が180㎝以上ある男子達の袴を調達するのは大変だったとのこと。

 

 

 

途中、大学の広報の方も取材に入られ、ますます賑やかになりました。

 

 

 

和服での立ち居振るまいの講習に真剣に聞き入る留学生達。

 

 

 

和服での作法を学ぶことは、日本人の心を知り、生活を理解することに繋がります。

 

 

 

普段着とは打って変わって表情も凛々しく粋な着物男子に変身。

 

 

 

扇や桜の枝を手にして美しい振り袖姿。

 

 

スタッフの声かけでポージングも決まりました。

 

 

 

イスラム圏マレーシアの学生は、頭全体が隠れるようなスカーフを巻いているので、その上から大きなお花を付けてあげると輝く笑顔に。

 

 

 

 

お天気にも恵まれたので草履を履いて外へ。

 

 

颯爽と構内を歩き、校門前で記念撮影することが出来ました。

留学生の皆さん、美しい着物を着て私達と過ごした楽しい一日を、帰国してもずっと忘れないでいて下さいね。

 

 

 

さて、この日の書は「桜」。

桜の幹の、内から湧き出るような力強さを線で、周りにピンク色を施して舞い散る花吹雪を表現しました。

 

 

 

 

カメラマンとして参加されている友人、旅行コラムニスト/イラストエッセイストの森優子さんは、この書をご覧になり中学校時代の教科書に載っていたエッセイを思い出したと言って下さいました。

大変嬉しく、またその文章に大きな感銘を受けたので、ここに一部引用させていただきたいと思います。

 

「言葉の力」 大岡信

京都の嵯峨に住む染織家志村ふくみさんの仕事場で話していたおり、志村さんがなんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物を見せてくれた。そのピンクは淡いようでいて、しかも燃えるような強さを内に秘め、はなやかで、しかも深く落ち着いている色だった。その美しさは目と心を吸い込むように感じられた。

「この色は何から取り出したんですか」
「桜からです」

と志村さんは答えた。素人の気安さで、私はすぐに桜の花びらを煮詰めて色を取り出したものだろうと思った。実際はこれは桜の皮から取り出した色なのだった。あの黒っぽいごつごつした桜の皮からこの美しいピンクの色が取れるのだという。志村さんは続いてこう教えてくれた。この桜色は一年中どの季節でもとれるわけではない。桜の花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな上気したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ、と。

私はその話を聞いて、体が一瞬ゆらぐような不思議な感じにおそわれた。春先、間もなく花となって咲き出でようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿が、私の脳裡にゆらめいたからである。花びらのピンクは幹のピンクであり、樹皮のピンクであり、樹液のピンクであった。桜は全身で春のピンクに色づいていて、花びらはいわばそれらのピンクが、ほんの先端だけ姿を出したものにすぎなかった。

考えてみればこれはまさにそのとおりで、木全体の一刻も休むことのない活動の精髄が、春という時節に桜の花びらという一つの現象になるにすぎないのだった。しかしわれわれの限られた視野の中では、桜の花びらに現れ出たピンクしか見えない。たまたま志村さんのような人がそれを樹木全身の色として見せてくれると、はっと驚く。

中学校『国語2』光村図書出版(現在は掲載されていません)

 

3月1日 世界への架け橋

5月20日 世界への架け橋vol.2

12月10日 世界への架け橋vol.3

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