2018.09.10
9月10日 自分の心で書く 

北海道の地震発生から今日で5日目。

また新たな台風が発生し、平成最後の夏が過ぎていく感傷に浸る間もなく心の痛む秋の始まりです。

被害にあわれた地域の皆さま、関係の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

こうした有事の際に改めて、何事もなく普通に過ごす日々の尊さを思い知ります。

あたりまえにあったものがなくなった時に、平凡な毎日がどれだけありがたいか、感じた想いを筆に託しました。

 

 

折り句 『にほん(日本)』

 

 に ごともない一日が

   ほ うせきのように光り

か  謝して生きる

 

皆さんの心の平安と一日も早い復興を祈っています。

 

 

 

 

さて、ここで芸術の秋を感じていただける書道展のご案内です。

私が所属している全日本書道教育協会主催の『第103回書教展』が、9月20日(木)より上野の東京都美術館で開催されます。

私は今年も近代詩文書で、三尺×六尺(約90㎝×180㎝)サイズの色画仙紙に書いて出品しています。

師の根本伸也先生にご指導を仰ぎながら、味わい深い色みの紙を探し歩き、個性的な印を彫っていただき、厳しい作品制作の中にも近代詩らしい面白い表現が出来たかなと思います。

近代詩文書用の、墨含みがよく潤滑の変化がはっきりと出る柔らかい紙で流通しているのは白がほとんど。

特に展覧会用のビックサイズとなると白以外の色にはなかなか出逢えません。

そんな中、いつもお世話になっている三鷹の『山口文林堂』さん、新宿の書道センターさんで掘り出し物を発見。

 

 

 

 

 

印は、山口さんのご紹介で、書印会を主宰していらっしゃる日展会友の池田樵舟(しょうしゅう)先生にお願いし、アルファベットで、デザイン性の高い風雅な落款印に。

 

 

 

 

詩文は、心から共感し現在の心境に沁み入った、伊良子清白の『漂泊』から一節を引用。

 

蓆戸(むしろど)に秋風吹いて
河添(かはぞひ)の旅籠屋(はたごや)さびし
哀れなる旅の男は夕暮の空を眺めて
いと低く歌ひはじめぬ

 

亡母(なきはゝ)は処女(をとめ)と成りて
白き額月(ぬかつき)に現はれ
亡父(なきちゝ)は童子(わらは)と成りて
円(まろ)き肩銀河を渡る

 

柳洩る夜の河白く
河越えて煙(けぶり)の小野に
かすかなる笛の音(ね)ありて
旅人の胸に触れたり

 

故郷(ふるさと)の谷間の歌は
続きつゝ断えつゝ哀し
大空の返響(こだま)の音(おと)と
地の底のうめきの声と
交りて調は深し

 

旅人に母はやどりぬ
若人(わかびと)に父は降(くだ)れり
小野の笛煙の中に

 

旅人は歌ひ続けぬ
嬰子(みどりご)の昔にかへり
微笑(ほゝゑ)みて歌ひつゝあり

 

太字の『故郷の谷間の歌は~交わりて調べは深し』の部分を、感動を表現すべく思い切って書きました。

 

 

 

 

表装された作品とは、私も会場で初めて対面します。

未熟な書ですがご指導賜りたく、謹んでご案内を申し上げます。

 

 

出典:(公社)全日本書道教育協会

 

【 第103回 書教展 】-伝統の書美を翼に乗せて-

日時:平成30年9月20日(木)~26日(水) AM9:30~PM5:00(最終日は正午まで)

場所:東京都美術館2F 第1展示室から第3展示室(台東区上野公園内) 

内容:役員・一般部・学生部・席書大会作品(毛筆・硬筆部門あり)

9/23(日)13時より一般部・学生部に分かれて作品解説が行われます。

 

広大な会場には、インテリアにも合う小さな作品から迫力のある大作、元気いっぱいの子供達の作品が所狭しと展示されています。

お時間が合いましたら是非、お運びいただけたら幸いです。

 

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