2024.09.30
9月30日 第108回書教展

ようやく秋らしくなりましたね。

生徒さんも涼やかな表情で教室にやってきて、学びに良い季節の到来です。

 

 

9/29日曜補講(上北沢区民センター)

 

去る9月19日(木)から26日(木)には、上野で『第108回書教展』が開催されました。

 

 

東京都美術館2F 第一~第三展示室

 

暑かった夏に負けず、見ごたえのある作品で埋め尽くされた会場。

三連休は連日600名~800名余りのご来場者で賑わいました。

 

 

コロナ前の活気が完全に戻りました

 

外国人の見学者も昨年よりさらに増加。

私も受付のお手伝いの日は、簡単な英会話の予習をしてから向かいました。

会場中央には昨年、日本芸術院賞を受賞された名誉会長・高木厚人先生の美しいとしか言いようのない仮名書。

鮮やかな構成、明るく爽やかな余白、風格のある線質に見とれるばかり。

 

 

風越の 峯のつづきに咲く花は いつ盛りとも なくや散るらむ

 

そして、代表理事で私の師である根本先生のダイナミックな大字仮名。

多彩な線を盛り込んだ大胆な書きぶりに魅せられました。

 

 

世の中を 憂しとやさしと思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば

 

書教展ではこうした大きいサイズの作品以外に『丹水会小品展』というコーナーがあります。

 

 

 

 

一点もののインテリアアートのように、ミニサイズでもキラリと光る作品が並ぶ楽しいコーナー。

 

 

丹水会小品展

 

いつもお世話になっている、監事の井上雅月先生にお誘いいただき初めて出品させていただきました。

 

 

井上雅月先生の躍動感あふれる漢字作品

 

以前も書きましたが私は小学生のころから夏目漱石ファン。

英語教師をしていた頃の漱石が「I love you」を「我君を愛す」と訳した教え子に、「月が綺麗ですねとでも訳しておきなさい」と言ったという逸話があります。

この奥ゆかしい言葉に深く感銘を受け、以前からずっと作品にしたいと思っていました。

日本人であれば誰でも特別な想いの宿る『月』。

ふたりを優しく包む月夜の情景が見て下さったかたの心に広がるよう、様々な墨色を試したり、隷意のある字形を取り入れたり、月がぽっかりと夜空に浮かんでいるような構成を模索したり。

自分らしい表現を目指し、満を持して挑みました。

 

 

縦35.5cm×横11cm

 

茅ヶ崎の井上先生社中の皆さんと表装もご一緒させていただき、横浜の素晴らしい表具師さんとのご縁も賜りました。

面談や電話、ラインで打ち合わせを重ね、古典美とモダン、確かな技術が融合した優美なお仕立てに。

 

 

表装・デザイン 岡 吉之 ㈲美術表装『岡忠』

 

表具師さんは裏方のように見えますが、表装によって作品に命が吹き込まれるといっても過言ではないくらい本当に大切な存在です。

初めましての私に、言葉や墨色に最適な布地の選定から夜空の広がりを出すための丈の長さ、大きな会場にも合う絶妙な横幅、軸先の材質・デザインまで親身になって考え、心を一つにして作り上げてくださいました。

引き合わせて下さった井上先生にも感謝です。

 

 

書教展でもう一つ、大きなサイズの出品は武者小路実篤のとてつもなく力のある言葉。

背景の大胆な淡墨書は草書の「道」です。

 

3尺×6尺 約91cm×182cm)

表装・デザイン 武笠敦史( 武笠表具店)

 

表装は、大人生徒さんから伺った浦和の武笠さんによる現代的なデザイン。

言葉の意味をくみ取り、『人生が交差したり離れたりするさまを金と銀のラインで表しました』とのこと。

作品の前で立ち止まって「これは男性(の作品)かしら」と話されていたお二人のマダム。

(私の字は男性が書いたと思われることがよくあります笑)。

「この表装素晴らしいですね。ラインがあることで作品が生きて動いているように見える!」と口を揃えて言って下さり胸が熱くなりました。

武笠さんを教えて下さった生徒さんにも感謝するばかり。

更に嬉しいことに会期終了後にお嫁入りが決定。

世田谷のM様にあたたかく迎え入れていただきました。

 

 

 

 

私の活動を理解し、見守り応援して下さっているM様。

この言葉はご自身の歩みと共鳴し、表装についても「ブルーの額装と建物外壁のメテオブルーがマッチして最高!作品の到着が待ち遠しいです!」と喜んで下さり、私も心から幸せな気持ちになりました。

 

 

素敵なアートスペースにご自身で飾り付けを

 

 

導いて下さる師や先輩、書道仲間、作品を支え盛り立てて下さる業者さんのおかげです。

これからも言葉の持つ力を最大限に生かした表現が出来るよう、書美を追求していきたいと思います。

 

 

キャプション制作 小俣圭子

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